- 作者: 広瀬正
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 文庫
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タイムマシーンもの。(雑誌連載は1965年)
舞台は敗戦の年。空襲で燃えている世田谷の梅ヶ丘。“博士の研究ドーム”も火に包まれています。
瀕死の博士は、隣家の少年に「18年後の1963年の今日、ここに来てくれッ………」みたいなことを言って、それっきりに。
次のシーンは、空襲から一転して1963年。(←真鍋博っぽいキラキラ近未来な1963年です。)
隣家の少年は理系の30代に成長しており、博士との約束を守って「梅ヶ丘」にやってくるのでした。
↑↑このオープニングだけで、もう私は大興奮。(ブログで「終戦から10年」カテゴリーを作っているので。)
“つまり「キラキラの1963年」と「焼け野原の1945年」をタイムマシーンでいったりきたりするのね?敗戦から10年、20年の、復興・激動を読みやすくSFに仕立ててくれるのね?作者の広瀬氏は敗戦の年に21歳くらいで時代の目撃者だし!!”
と、激しく期待したらそうは問屋がおろさなかった。
以下、ちょっとネタバレ。
主人公の理系男は、タイムマシーンにありがちな「降りる年の操作を十数年、間違えてしまう」ことで、敗戦の年ではなく、森茉莉のいう「戦前の昭和」(美しいものが沢山☆)にタイムスリップしてしまうのです。
しかし「戦前の昭和」は広瀬氏もコドモだった。だから時代の目撃者というより、資料をどっさり集めて小説書いてる風情なのでした。
ご自身のヒリヒリした体験ではなく、子供だった時代のオトナ風俗を丁寧に丁寧に描くというか。
つまり「3丁目の夕日」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ウォン・カーウァイの「花様年華」「2046」みたいに、古きよき時代(と後世の人が思いがちな時代)を緻密に再現しました、みたいな。
それはそれで素晴らしいことなのだけれど、もっとオトナの広瀬氏が実際に見聞きしたこと=敗戦から10年のナマナマしさ、を書いてほしかったなあ☆
でも敗戦からの10年のことは、当時の読者層(1965)全員がウンザリするほど知っているわけだから、書いてもウケないのだろうな。