三島由紀夫の、敗戦後3年目位を舞台にした小説を読んでみる。上流階級の人らが恋してる話。
でも、小説からは敗戦間もない頃の日本が、まったく、見えてこないのでした*1。ちょうど25世紀の人が、図書館で21世紀のクウネルや天然生活をめくっても、汐留シオサイトやコンビニが林立する日本を想像することが出来ないように…?
登場人物は、贅沢な作りのカフェでショコラを飲み、レエスの手袋をして新型のお帽子のことをぼんやり考え、新宿でアメリカ人と待ち合わせて河口湖までドライブしてる。←アメリカ人が出てきてたとしても、占領や進駐軍の群れを匂わせることなく、デジカメのCMに唐突に優美な白人が出てくるみたいな感覚で登場。
こういう小説を後世の私らが読むと、敗戦からわずか3年で、日本はすっかり復興しているみたい錯覚してしまう〜
いくら上流階級の人であっても、河口湖に行くのに新宿で待ち合わせたら、こういう光景は視界に入ってくるのに。
↑新宿駅南口。
↑左が新宿三越で、右が伊勢丹 *2
でも、みんなが辛い思いをしていた時代には、カフェでショコラ……みたいな小道具が、すごく心に沁みるのだろうなあ。(実際の連載は、敗戦5年後の婦人公論。)
*1:銀座の泰明小学校の前の焼け跡は、ちょっと出てくる
*2:絶版らしきこの本asin:4163382305からスキャンしました。