使いすてカイロ発売前夜


■使い捨て懐炉は1970年代末に発売されたそうです。なので、使い捨てカイロ発売寸前の古雑誌(anan)を見ると使い捨てじゃないカイロ(ベンジンを入れて使う銀色のもの)が紹介されています。ちなみに同じ号に紹介されている映画は「ジョーズ」。


■1978年の「すてきなあなた」には、ベンジン式のカイロを「小さい恋人」に喩えるエッセイがあり、そこでは「カイロといっても、ベンジンをしみこませ、小さな乾電池で点火する、新型の白金カイロでした」と書かれている。



わざわざ「新型の」と書いているのは、当時の「暮しの手帖」読者には、懐炉というと炭をおこして使うクラシックなもの↓を思い浮かべる世代が多かったからかもしれません。


■参考/谷崎潤一郎「蓼喰う虫」より。老人が、お妾さんに懐炉の暖まり具合を微調整させるシーン。

老人は下腹から懐炉の包みを取り出して、「小屋は広いのに入りが悪いせいか、どうも冷えてかなわない」と、つぶやくように云った。お久が懐炉灰の火を直すので、手が塞がっている隙に、要は気を利かして、「いかがです、胃袋の方へもう少し懐炉をお入れになったら」と、これもご持参の錫の銚子を取り上げて云った。


懐炉灰の火を直す」には、ちょっとコツがいりそうです。


21世紀、お酌をする時、「胃袋の方へもう少し懐炉をお入れになったら」という言いまわしを使うと、どの程度、意味が通じるのか気になるところ。