宮脇俊三の少年時代(イコール戦時中)が書かれている「時刻表昭和史」は、読みやすくて大好きな本です!
少年目線での戦中描写だから難しい言葉が出てこないし、宮脇少年の世界はとにかく鉄道中心(乗りたい乗りたい乗りたい乗りたい乗りたい。死んでも乗りたい、みたいな感じ!)に回っているので悲惨すぎない。
戦争が次第に激しくなる様子を時系列に沿って淡々描いている点がイイのです。
そんな「時刻表昭和史」に「不急不要の旅行はやめよう」ポスターのことが出ていたので引用します。
軍需景気に恵まれた人たちが、一斉に温泉場や観光地に繰り出したのである。(略)「不急不要の旅行はやめよう」のポスターが駅に貼られるようになったのは、昭和15年の夏頃からだったと思う。それは「不急不要の旅行」者が多いことの証左でもあった。(略)
また、宮脇少年は、軍需成金のおかげで車内のマナーが悪くなったことを嘆いています。
日曜日の列車はひときわ混雑していた。軍需景気で観光客の層が広がったせいであろう、行儀の悪い集団が多く、飲み食いちらし、女の客に声をかけたりするのであった。大陸では毎日戦闘している兵隊さんがいるのに内地の人はこうして遊んでいる、これでいいのか、と私は思った。もっとも、その私も、学校では「戦地の兵隊さんのご苦労を思うと、すこしくらいの苦しいことなんか何でもありません(略)」などと慰問文を書きながら、用もないのに汽車や電車に乗りに出かけていたのである。
この辺を読むと、非常時モードと、ある種のにぎやかさが共存していたことがうかがえます。
(しかし、飲み食いちらし、女の客に声をかけたり…って!「ウルフオブウォールストリート」で成金デカプリオがファーストクラスで乱痴気騒ぎしてたような感じでしょうか…)