この絵は、防寒より首筋の露出を選んだ女性達の図*1。
女の肩掛けは防寒用の品物かと思ふと大いに違ふ。日本髪に結つた女などは、タボと称する頭の尻ッ尾を保護するために、一番寒からうと思はれる後襟をマルデ開けて、肩掛けはサモ厄介さうに肩の上だけ掛けておく。そんなに邪魔なモノならいつそ掛けなきゃいいのに。(吉岡鳥平)
この前、テレビで現代の結核のことをやってましたけど、体内に眠っている菌をうっかり起こさないためには、日頃の健康な生活が大切なのですって。
でも昔の人って結核でどんどん亡くなっていたじゃないですか。そんな時代に、「一番寒かろうと思われる後襟をマルデ開け」た装い*2って……かなりのロシアンルーレット、かなりのデカダン、なのでは。他の要因(免疫力が低下しそうな過労、栄養不足など)と、この装いとが重なった時に、まずいんじゃないかなあ。
(※もっとも、昔の庶民は生まれ落ちた時から、江古田ちゃんいうところの「淘汰されちまえ」のフルイにかけられ続けているので、大人サイズにまで生き残っている人にはあるレベル以上の生命力があるのかもしれないけれど、それにしても……。)
もしも寿命と引きかえのファッションならば、よっぽどお金持ちのハンサムに「ああなんとうつくしい首筋だ、すばらしい!すばらしい!ぜひ妻に!」ぐらい大絶賛してもらわなければワリがあわない。でもこの絵の中では平凡そうなお兄ちゃんに笑わているだけ。残念ー
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「美意識のためならば、厚着はガマン」と、無理できるのも北限あり。これは昭和30年代の秋田だそうです。こちらのサイトから。
あと、大泉黒石の小説に出てくる、ハルピンの日本人芸者「桃千代さん」「バイカルさん」とかも軽く北限を超えている。彼女達は凍瘡のあとが焦げついている耳たぶを髪型で隠しているのです。マイナス20度とかの世界で「後襟をマルデ開ける」装いはまず不可能だろうなぁ。