■三島由紀夫の「恋の都」(1954・昭和29年)のヒロイン「まゆみ」は美人で・英語が堪能で・仕事が出来て…アメリカの男性達にモテモテで…贅沢な都会の暮らし…。
そんな、敗戦から10年に満たない頃の夢物語のひとつとして、冷房のきいたビルディングが「わざわざ」という感じで登場します。
「日米合弁資本で建てられたN国際会館」の内部が冷房でひんやりしているというシーン*1。
「N国際会館」はたぶん出来たばかりの日活国際会館で、当時の人にとっては最先端の場所。今のペニンシュラのところですねー*2
ヒロイン達は地下の「外人向け商店街」で気ままにショッピング♪
都会のセレブが、ほんのひとときだけ味わえた贅沢・・・それが冷房。(関連話題 「“エアコンの匂い”に洗練を感じた時代」id:NARASIGE:20060715)
(ちなみに「恋の都」の書かれた1950年代半ば、電力事情が悪いため日立はルームエアコンの製造を中止していました。 日立エアコンヒストリー)
稼ぎが多く華やいだ生活をしている設定の「まゆみ」でさえ、自宅にあるのは「うすみどりの扇風機」なんです。
■夏の銀座の描写にこんなものもありましたよ!
わざと店内を薄暗くして休業中みたいに陰気にガラス戸を閉めて「完全冷房」を売り物にしている店があった。
かつては、「ガラス戸を閉めている」イコール、「休業中」のイメージだったのか。当時の人が夏のスタバを見たら「ん?やってるの、やってないの、どっち?」と思うでしょうか。
(関連話題 「昔のビルディングは窓が開いていた」id:NARASIGE:20080614)