日仏学院ラ・ブラスリーにて行われていた、『ウチマタ』、クロード・エステーブの写真展。3月11日の大地震以降見ると、余計にハラハラしてしまう写真。
日本では200年来、内股は、きわめて重要な女性的ポーズなのである。
それは着物文化に結びついており、日本画様式の中で体系化され理想化され、現在もなお、マンガや渋谷ギャルの“可愛いルック”として息づいているのである。
もろさを自ら露呈し、いまにも倒れそうな体をぎくしゃくした動きの中で立ち直らせる小股、そして地面をこするようにして歩むことは、極東では、滑稽でも愚鈍でもなく、むしろカワイク、もろく、優しく、また子供っぽいかもしれないが、全く女性的であり、欲望をそそることもできるのだ。
こう書かれていると、読む人に、日本人女性の先祖全員が、着物で、内股で、カワイク・もろく・ぎくしゃく、小股で、生きてきた感じを与えるかもしれませんね。
しかし…
ウチマタは全員ではなくごく一部の女性のしぐさだったこと(内股歩きの“職業”については、大岡昇平の自伝小説「少年」をご覧ください。大岡昇平の母親は、過去を隠すために“芸者の内股歩き”を封印しています)、その「一部の女性」の置かれていた立場は、とても独得だったこと。
この点についても、文中で触れてほしかったなあ、と思います。
一般に「花柳界」とか「相撲界」とかとか、「界」のつく世界の人の美意識や常識は、「界」の外の人達とはまったく違いますよね?
これは、お隣の国の1968年のカラー写真ですが、昔のアジアっておおむね、こんな感じでしょう?すべてが人力で行われる時代です。「もろさを自ら露呈し、いまにも倒れそうな体をぎくしゃくした動きの中で立ち直らせる小股」をしていたら、いつまでたっても荷物を運べない!