満洲のことが知りたくて「ペトロフ事件」を読んでみました。みうらじゅんの松本清張ファンブック「清張地獄八景」の中で、時刻表トリックなら「点と線」より先に「ペトロフ事件」が書かれているとあったからです。
巻頭に便利な地図がついていました。登場人物たちは軽々と鉄道で移動するので、これがなくては1ページも読みすすめることができません!!(※読めない漢字ばかりでクラクラするので、自分の知っている地名に赤丸をつけてみました。)
私はミステリーにあまりピンとこないたちなので感想は省きますが、印象に残ったのは船と鉄道の乗継ぎについてです。神戸と大連を結ぶ日満連絡線が沈没すると、大連から出る特急「あじあ」に空席が目立つというシーンを引用します。
ナタリヤは軽快なスーツに身を固め、小さな鞄ひとつ下げると母親の祝福の言葉を後に、大連駅から「あじあ」に乗った。いつもなら満席になる筈の車内に、この日は空席が目立っていた。初めのううちは何とも思わずにいたナタリヤは、その理由に思い当たるとこわばった表情に変わった。
大連に住んでいる人は、船をおりると自宅へ直行して、旅の疲れをいやすことができるのだが、奉天や新京や哈爾浜や、もっと奥地の住人は、埠頭からバスで大連駅に運ばれ、さらに長い時間をかけて列車にゆられていくのである。今日、空席が多いのは、連絡線が朝鮮沖で遭難したためなのであった。(光文社文庫175ページ)
私は船と鉄道の手際のよい連携が好きみたい。水運と鉄道の中継地点に萌えます。
↓連携や中継がスムーズなことを示すポスターです。このポスターを掲載していたサイト(函館市中央図書館)がリニューアルの際に除外してしまったらしいのが残念。載っていれば拡大できたのですが。日本と満洲を「1枚の切符で」「敦賀北鮮直航船経由」という部分だけ読み取れます。
京都大学デジタルアーカイブの満洲の項目にどっさり絵葉書があって、「ペトロフ事件」をイメージする助けになります。埠頭、でかい!
(夜の哈爾濱)モストワヤ街 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ