約90年前に描かれた未来
新型コロナ対策でステイホームしなくてはならない2020年。ツライですね。しかし昔の人にとっては、家に「居ながらにして色々できる」生活が、憧れだったようです。
今日は、版画家・漫画家の前川千帆(1988-1960)が予想した未来のライフスタイルを紹介します。
「ステイホーム」と「居ながらにして色々できる」は意味あいが違うけれど、“家にいる”という大まかなくくりでご覧ください!(『現代漫画大観・現代世相漫画』昭和3・1928より)
前川千帆が描く「動画配信サービス」(?)
コロナ禍で「無観客配信」が増えました。こちらは芝居の配信らしきものを楽しんでいる人たちです。壁掛けディスプレイ(=「方尺の鏡」)を、音声で操作している!?すごい!
ラジオの姉妹局が大劇場の芝居を見せて呉れる。方尺の鏡があって、帝劇でも歌舞伎でも、自由に註文すれば、居ながらにして芝居が見える。「もしもし、ちがってますよ、歌舞伎は昨晩も見ましたよ‥‥」
テレフォンショッピンング
三越専用のパイプが愉快。郵便ポストと別に、荷物用のパイプを設置するんですね。この女性、パイプが詰まるほど買い物していそう。
メリヤスのシャツと、靴下が欲しい、電話をかける、直ちに百貨店特設の大パイプから送り届けられる。
【参考】三越ロゴ。
蛇口をひねると名湯が出る風呂
水は「水道局」から。湯は「湯道局」から!シンプルなバスタブがおしゃれ。
草津温泉組合からの硫黄温泉パイプ、もしくは有馬の炭酸泉パイプが太いチューブで温泉を提供する。水は水道、湯は湯道局からのパイプでほとばしる。これもボタン1つ押せば用を弁じる。
自宅にドリンクバー
飲み物と、「ライス会社のご飯」が出てくるパイプ。(ご飯はパイプで送らないでー)
現代の水道瓦斯のチューブが更に殖へて、ビールパイプ、玉露パイプ、シチューパイプ、チョコレートパイプと沢山の栓があって、ボタン1つ押せば各会社からすぐに提供される。太いパイプはライス会社のご飯のパイプ。
「世界風会社」によるエアコン
更に驚くべきは 世界風会社の創立だ、アメリカにできた会社だ、申し込んどけば各戸に太い鉛管を取り付けて呉れる、そして 夏にはアルプスの山巓の冷たい風を、冬は印度洋上の熱風を送って来る。
「世界風会社」…メルヘンな響きです。今の私たちは冷房に慣れっこですが、ほんの2、3世代前までは、夢物語だったんですよね。カラダが冷房についていけない人がいるのも、生き物として当然ちゃ当然。冷房のかけすぎに注意しましょう!
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以上、未来の生活予想でした。
新型コロナで外に出られないのはツライ。しかし、ここは発想を転換して「未来人ごっこ」をしてみませんか?実は私たち、未来人なので「居ながらにして」色々できてしまう!
未来の気分でステイホーム!(←やけっぱち気味に)
参考・前川千帆が描いた現実(電話交換嬢の場合)
ステキな未来図を紹介してきましたが、当時の現実はこんな感じでした。これは電話交換手にヒドい言葉を浴びせる人たちの図です。
いくら顔が見えないからと云っても、何かと言えばズベタ、ウレノコリの悪態は毎日散々聞き飽きて居ても、聞く度に事新しくギクっと応える、(略)夏は暑い、涙と汗が出る、苦しい女の仕事の1つだ。
「涙と汗が出る、苦しい女の仕事」。かわいそうに。昔の人は礼儀正しかったなんて、嘘。
現在、医療従事者の方はもちろんのこと、新型コロナ関連の電話対応も、本当に大変だと思います。お互い優しくありたいですね…私たちは未来人なのですから。