出来立てホヤホヤの築地本願寺
獅子文六の「浮世酒場」(昭和10)は、酒場に集まった酔客が、東京ポッド許可局のように時事ネタしゃべりまくるスタイルの小説です。昭和10年の時事ネタなので、最新ニュースが"ハチ公の死"や"三原山心中"だったりするわけですが!
そんな時事ネタトークに、できたてホヤホヤの築地本願寺が登場します。私達にとっての築地本願寺は、重厚な復興建築ですが、「浮世酒場」の頃の本願寺は、去年(昭和9=1934)完成したばかりの斬新な建物。
酔客が本願寺についてあることないことしゃべる様子がホントに勝手すぎて、読んでいるこっちがドキドキする。その中のごく1部を抜粋します。
「あれは古代印度の寺院建築にヒントを得て、さらに西洋近代レヴィユウ劇場や大キャフェの様式を参考にしたのですから、誠に至れり尽せりで」
「寺院は亡魂のアパートですから、やはり耐震耐火の本建築でないといけません。」
「これはまだ秘密ですが、新築の大伽藍の屋根の上に、赤ネオンで南無阿弥陀仏の6文字を輝かす計画だそうで」
築地本願寺は関東大震災後の建物なので、「やはり耐震耐火の本建築でないといけません」というセリフが出るんですね。しかし、本願寺をキャフェ様式だとか、屋上に赤ネオンがつきそう、とか言ってるけど…いいのかな💦
博覧会の台湾館みたい?
「浮世酒場」では、酔客に「博覧会の台湾館みたい」とか言われてしまった本願寺ですが、私は、この「樺太館」の外観の方が近いと思います。まあ「博覧会の台湾館みたい」は、異国情緒あふれる建物全般のざっくりとした印象なのでしょうけれど。(大礼記念国産振興東京博覧会)樺太館 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ)
築2年の本願寺・国際盆おどり
雑誌に昭和11年(1936)の本願寺が出ていました。出来立ての本願寺で行われる、はじめての催し=国際的な盆踊り。カルピスの旗が見えますね。
わが国に在留して国際文化の振興に貢献した物故外国人の霊を慰める国際仏教協会主催の国際うら盆の夕。今年はじめての催しなので参会した在留外人は約200人
▼「踊り出した外国婦人連」。どんな義理で参加しているのかなあ。外国人男性の写真はありませんでした。
築20年たった本願寺
Tokyo 1954 | by George Washenko | Kris_41 | Flickr
ドーン!1954年頃(昭和29頃)に撮影された築地本願寺。敗戦から9年たった頃の写真です。本願寺は1934年(昭和9)に完成なので、この外観で築20年なんです。とてもそうは見えない!(私は築地本願寺の脇を通って通学していました。でも、いつソレが建ったのかなんて考えたこともなかった。1000年前から建っていたと言われても、きっと信じましたよ。)
Tokyo 1954 | by George Washenko | Kris_41 | Flickr
本願寺盆踊り大会の看板。
Tokyo 1954 | by George Washenko | Kris_41 | Flickr
伊東忠太の動物の前でポーズ。本願寺を手がけた伊東忠太は、1954年に86歳で亡くなったそうです。ちょうどこの写真の頃に亡くなっているんですね。
1950年代のカラー写真がある理由
なぜ1950年代に本願寺のカラー写真があるのか?それは、すぐそばの聖路加病院が接収されていたからでしょう。そのへんのいきさつについては、こちらを見てくださいね↓
Tokyo 1954 | by George Washenko | Kris_41 | Flickr