獅子文六「女給双面鏡」と出征
獅子文六の『女給双面鏡』(昭和13)は、大島弓子の「つるばら つるばら 」を連想させる作品です。内容はかなり違うけど。
主人公は、幼い頃から女の子に間違えられてきた青年。彼はどの仕事をやってもうまくいきません。仕方なく、男性であることを隠して「キャフェの女給」になってみたら、これが大成功!“モダンな女性の髪型は、男性の髪型と同じ”であることを利用したのです。ところが女給としてモテモテの彼にも、召集状が来てしまうのでした…。*1
獅子文六全集ではラストがカットされていた
先日、『女給双面鏡』が掲載されていた雑誌(新潮社『日の出』昭13年2月号)を買ってみたんですよ。そして掲載時のラストシーンが『獅子文六全集』*2では1ページ分削除されていることを知りました。
ちなみに削除されたラストは、“召集を知った主人公が「国家のお役に立つ時がきた」と、突然男らしくなる”というもの。しかも女っぽかった昔の自分を(罵詈雑言を用いて)猛反省している!戦意高揚系雑誌「日の出」の連載だから、余計そういう展開がもとめられらたのかもしれないけれど…残念です。
▽「ユーモア小説 女給双面鏡」とあります。コート姿も華奢な主人公。
▽参考:男女ともいけそうな髪型の例。ツヤツヤです。(昭和9年)
「女給双面鏡」が発表された時代
獅子文六の『女給双面鏡』を目当てに買った「日の出」(昭和13年2月)。その他にもインパクトの強い画像があるので少しだけご紹介しましょう。
「日独伊防共をどり」
歌詞を拡大。「ひっとらへたら容赦はナチス 」
巻頭漫画「日独伊防共記念釣り会」小泉紫郎
「支那事変画報」
「兵隊ごっこ」の漫画
寺尾よしたか 「アレ デコ 坊の家 誰か出征したの?」「僕の兄イちゃんダイ」
『女給双面鏡』が掲載されていた新潮社「日の出」は、かなり時局に便乗した雑誌のようですが、私は何冊か持っています。獅子文六の作品が載っているし、漫画がかわいいから。
獅子文六全集で「面白いなあ、読みやすいなあ」と思った作品は、大体「日の出」に掲載されていたんですよ。なんだか、くやしい(笑)