佐藤いぬこのブログ

戦争まわりのアレコレを見やすく紹介

生き延びるための灸

お灸でメンテナンス(ほっこり編)

私がセルフ灸をするときは、関節に油をさすつもりでやっています。ブリキのロボットが自分自身を整備している感じです。

「人生50年」の時代ならともかく、関節の耐用年数を過ぎても生きていくからには、メンテしておいて損はない。関節の周りには(うまい具合に)重要なツボが集まっているし、一石二鳥!

 

ひと昔前(私が鍼灸の国家資格をとった頃・笑)は、お灸はお年寄りのもの…というイメージがまだ残っていたけれども、今は「ととのえ」「リラックス」「スローライフ」のカテゴリーに入っているようですね。インスタの#moxa(もぐさ=moxa)を見れば、“アジアの知恵で、ほっこり未病治✨”みたいな画像がいっぱい出てくるし。

 

▽🎵わたしは、夢みる、経穴人形🎵。灸はお茶の缶に入れておけば、湿気知らず。

お灸でメンテナンス(命がけ編)

近年「リラックス」「スローライフ」の雰囲気をまとうことに成功したお灸ですが、かつては極限状態を想定していたケースもありました。

たとえば、茨城にあった「満蒙開拓少年義勇軍」の訓練所では、少年たちが“満州に渡る前”にお灸の知識を教えていたのです。病院もない過酷なエリアに行くのだから、せめてお灸で健康管理してみてね、という感じだったらしい。(PDF 満蒙開拓少年義勇軍 内原訓練所の灸療所「一気寮」に関する調査報告

 

また、敗戦目前の婦人雑誌には、“生き延びるための灸”みたいな記事をちょいちょい見かけます。“医者もクスリも不足しているから、とにかくお灸で生き延びましょう”といった調子なんです。

胃腸さえ丈夫ならばたいていの病気を押し切ってゆけるものですが、近頃は医者や薬の不足に加えて衣食住の不如意から来る心身の疲れ、不衛生、不消化などを原因して、胃腸病患者が続出しております。胃腸病は特に灸の効き目が顕著ですから、重くならないうちに根気よく灸を据えてください。(昭和20年8月『主婦の友』)

「衣食住の不如意から来る心身の疲れ」なんてサラッと書いてあるけれど、よく考えてみれば昭和20年8月の記事。もはや「衣食住の不如意」どころか、絶体絶命の読者も多かったのでは…。

2022年8月の私たち

NHK 新型コロナウィルス データで見る感染状況 2022/08/10

今、戦時中の灸のあれこれを読んでいると「まア!昔って大変ねえ。医者やクスリが不足して、灸に頼るしかないなんて…」と、ヒトゴトにしたくなります。しかし、考えてみりゃ2022年8月も、なかなか悲惨な状況ですよ。(参考 新型コロナウイルス 日本国内の感染者数・死者数・重症者数データ|NHK特設サイト

いつしか「ほっこりのお灸」から「命がけのお灸」にフェーズが変わってきているのでしょうか。

 

▽ 私はブログで、できるだけ鮮明な画像をのせるように心がけています。が、敗戦間近の雑誌は紙質が悪すぎてムリ!

昭和20年7月『主婦の友

narasige.hatenablog.com

 

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