佐藤いぬこのブログ

戦争まわりのアレコレを見やすく紹介

縮んだお菓子と、体操の写真

 「子供の頃好きだったお菓子が、すごく小さくなっている」という嘆きをSNSで見かけます。なにごとも、小さくなるのは悲しいですよね。

 今日は、戦時中にグラフ誌の写真が、小さく(安く)なった例を紹介しましょう。画像は、すべてお金持ち向け雑誌『ホームライフ』からです。

戦争前の優美な体操写真

 まずは、日中戦争がはじまる前の優雅な写真を。

今も昔も、体操写真は「運動・健康」を隠れミノにして若い肉体を凝視できるものですが、上品さが売りだった雑誌『ホームライフ』も体操ページをしのばせていました。

▽こちらは昭和10年。知識階級のお嬢様が、デンマーク体操をしています。 お天道様の下で令嬢の脚を拝めるのは、体操のおかげといえましょう。彼女達は「母校 自由学園」で体操を教える予定とのこと。

『ホームライフ』大阪毎日新聞 昭和10年12月

▽こちらは“実業家の令嬢が自宅で体操している”設定の写真。いや、設定じゃなくて、本当に自宅で体操しているのかもしれないけれど…。

人生が明るく、いつも春のように…たまらなく嬉しい微笑がたえず口もとにほころんでいる、なんのクッタクもなくのびのびと成長して行く娘ざかり

『ホームライフ』大阪毎日新聞 昭和11年4月

▽宝塚のみなさん。特集のタイトルは「明朗・自由な健康美の検討」と、一見真面目ふう。薄着の写真には、いちいち医者や大学教授の文章(日本女性の体格の変化について一緒に考えようではないか、的な)が添えられています。これなら読者は安心して「健康美の検討」(笑)ができますね。

『ホームライフ』大阪毎日新聞 昭和11年8月

▽そして、日中戦争直前の昭和12年7月号。松竹少女歌劇「男装ティーム」の訓練風景です。軍国的訓練のテイで、めったにみられない角度から少女たちを拝めます。「男もかなはぬ大柄な少女たち」とは対照的に、指導する「在郷軍人さん」は(あえてなのか)小さい。

『ホームライフ』大阪毎日新聞 昭和12年7月

戦中の体操写真

 以上、令嬢や、宝塚、松竹少女歌劇の画像をご覧いただきました。しかし日中戦争が始まると、豪華だった『ホームライフ』の誌面が急に安っぽくなる。そしてその影響は体操のページにも及びます。

▽こちらは昭和13年「ある舞踏研究所に集った娘たち」の体操で、お茶を濁している例。「ある舞踏研究所」って、何ですか…?お菓子が、いつのまにか小さくなっていた”感がすごい!(もっとも、“令嬢や宝塚の体操より、無名ダンサーのエロス歓迎”の読者も多そう)。

『ホームライフ』(大阪毎日新聞昭和13年4月号

 この時期の編集後記には、誌面が寂しくなった理由として、“カメラマンが戦場に出払ってしまったから。最近は上流階級に取材を断られるから。”みたいな言い訳が書かれていました。

▽ちなみに、雑誌『ホームライフ』自体もサイズが縮んだあげく、廃刊になっています。ああ。(表紙は、【左】昭和14・東郷青児 【右】昭和16・小磯良平

それにつけても、2022年の日本は不安がいっぱい…。「お菓子」その他がこれ以上、縮みませんように!

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