大政翼賛会時代の花森安治
この2人がコラボしたら、ものすごく魅力的な“何か”が誕生するはずですよね?ふつうは。*1
では、彼らのコラボ(?)が戦時中に行われると、何が生まれるのでしょうか?
それを知る手がかりになるのが、『戦争と宣伝技術者 報道技術研究会の記録』(山名文夫・今泉武治・新井静一郎編/1978年/ダヴィッド社)です。
「報道技術研究会」(報研)は 、デザイナー・コピーライターなどの制作集団で、「国家宣伝の高度化と総合化」を目指していました。この本から、【大政翼賛会の花森安治】と【報道技術研究会の山名文夫】の時代を垣間見ることができます。
「おねがひです。隊長殿、あの旗を射たせて下さいッ!」
▽中はこんな感じ。「大政翼賛会 戦意昂揚ポスター(昭和18)企画構成・山名文夫」。有名な「隊長殿、あの旗を射たせて下さいッ!」のポスターです。
この地球上から、米国旗と英国旗の影が一本もなくなるまで、撃って撃って撃ちのめすのだ 大政翼賛会
▽「報道技術研究会」会員の証言には、大政翼賛会の「花森さん」がたびたび登場します。たとえばこれは森永のデザイナーだった方*2の回想。
翼賛会にはそれからよく出かけた。花森さんは実においそがしかった。(略)最近は暮しの手帖で拝見するのであるが、当時からデザインやイラストもお上手で……
「敵愾心昂揚」「決戦攻勢」のキャンペーン
▽昭和19年10月、山名文夫と花森安治の打合わせ@大政翼賛会。
「謀略展」を変更して目下“敵愾心昂揚”一本にあらゆる宣伝を集中するということになり……
▽敗戦目前の昭和20年6月、連日「花森氏」が登場。
花森氏から情報局の最終的宣伝案——決戦攻勢宣伝案をきく。
ご存知のとおり、花森安治は大政翼賛会時代について口を閉ざしていたので、『戦争と宣伝技術者』にもご本人による文章はありません。とても残念です。以下はあとがきから。
「報研の記録を本にしておこうではないか」という話が出た。それがようやく本書となったのである(略)。思い出は、報研とかかわり合った方々みんなに書いてもらいたかったが、そうもゆかなかった。 すでに故人となったひともおり、あまり前の事なので、ほとんど忘れてしまって書くことがないと断られてしまったひともいる。特に、前川国男、花森安治、林謙一、戸板康二、小野田政、江間章子などのみなさんには書いてもらいたかったのだが、果たせなかった。
▽昭和16年の報道技術研究会。中央に委員長の山名文夫。(となりには建築家の 前川國男)
以上、『戦争と宣伝技術者』から、一部を紹介しました。
わしづかみ力のすごい人たちが、「敵愾心昂揚」や「戦意昂揚」にかかわっていた時代があったわけです。私がもし当時の人だったら、彼らの宣伝をまるッと信じたことでしょう。