佐藤いぬこのブログ

戦争まわりのアレコレを見やすく紹介

パステルカラーと、敵対心の醸成【戦時中の婦人雑誌から】

 私は、映画『ミッドサマー』見た時、あまりの恐ろしさに胃が固まってしまいました。映画が胃に“きた”のは、はじめての体験です。

 さて、戦時中の「婦人画報」を見ていると、ときどき『ミッドサマー』を感じることがあります。明るい色彩の奥底に、ナゾの理屈がうごめいているあの感じ!以下、昭和17年の「婦人画報から画像を紹介しましょう。

日米開戦後の「婦人画報」(昭和17)から

▽例えばこれ。一見、おっとりした表紙に見えますよね?でもよく見ると、右上に「米英の 総てを 滅し去れ」って書いてあるんですよ。こんなにパステルカラーなのに!!

婦人画報昭和17年12月号

▽拡大したところ。世界地図を見ている男の子と、「米英の 総てを 滅し去れ」

婦人画報昭和17年12月号

▽中をめくれば、「米英の強奪」をテーマにした地図があらわれます。なんという気のきいたグラフィック!この時期、ほかの雑誌はみすぼらしくなっていくけれど、「婦人画報」はとっても鮮やかです。

ゴム・錫・タングステンキニーネ…その他の南方特産ともいうべき戦時必需物資は、米英の「強奪」から救われてアジアを潤すためにのみ活用されねばならない。その時が、今、来たのだ!

婦人画報昭和17年12月号

▽同じく昭和17年婦人画報」の広告はこんな感じ。花森安治がいたことでおなじみ「パピリオ」の広告は、英米人をけなすために「豚」や「くらげ」を使っています。

英米人は、学問上で、自分たちのことばかりから考へて、ヒフの白いのほど、進化した上等の様にいってゐるが、ヒフの白いのがよければ、豚のヒフは人間より、もっと白い。

婦人画報昭和17年4月号

▽一瞬、「暮しの手帖?」と思ってしまう記事。でも、書き出しは「米英撃滅の日まで、一億火となるべきとき」なんですよ。右下の「HIG」という謎サインは、花森安治ではないかと思っています。詳しくはこちらをご覧ください。

「わたしたちのヒットラー 総統と少女」【昭和17年の女性誌より】 - 佐藤いぬこのブログ

婦人画報昭和17年5月号

大政翼賛会のひらがなメッセージ

この時期『婦人画報』の巻頭には、いつも大政翼賛会の柔らかメッセージがあります。中央には、大政翼賛会のマーク。

戦ひは長い。けれども、前途は明るいのです。どんなことがあつても、私たちはしつかりしませう。大政翼賛会

婦人画報昭和17年4月号

昭和17年の『婦人画報』は、(日米開戦後なのに)絵本のようなページがあるから、よけい「ミッドサマー」を感じてしまう。ピッチャー、ワゴン、トレイなどIKEAのガーデンセットを思わせます。

婦人画報昭和17年5月号

以上、簡単ですが戦時中の「婦人画報」を紹介しました。

先日「特定国への敵対心を醸成」のニュースが話題になっていましたが、「敵対心の醸成」や「戦意昂揚」が、ふんわりラッピングされていた時代を忘れないようにしたいものです。

▽「暮しの手帖」の花森安治は、大政翼賛会で「敵愾心昂揚」の宣伝にたずさわっていました。

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