「すてきなあなたに」78年春号より、花冷えの寒い日、お友達の家から帰る際のエピソード。
題は「小さい恋人」です。白金カイロをここまでロマンティックにする人がいたでしょうか。
お玄関に立った私が、きっと寒そうに見えたのでしょう。友だちは、ちょっと待っていらして、といって奥に入り、なにか白い包みを手にして出て来ました。
「これをおかけになりませんか」と渡されたのは、てのひらにちょうどのるくらいの大きさの、ペンダントのようなものでした。
きれいな白いレースのハンカチにつつんであって、ピンク、紫、黒、の細い組み紐がついています。
なにかしら、と思いながら、いわれる通りに首にかけ、ポケットに入れてみました。さわるとほんのり暖かいのです。
それは、小さな、薄手の手のひらにのるようなカイロでした。カイロといっても、ベンジンをしみこませ、小さな乾電池で点火する、新型の白金カイロでした。(中略)。
その日はカイロをお借りして帰ったおかげで、寒さもこたえず、カゼもひきませんでした。そして、私も同じものを買いました。
それはまるで、秘密の小さな恋人とでもいいたいほど、たのもしいものです。
カイロケースといえば、リラックマかアンパンマンだと思っていましたよ……。このレースのケース入りならハンギングロックのピクニックにも持っていけるであろう。
白金カイロをレースハンカチでペンダント風*1にするお友達もすごいが、それをちゃんと「小さな秘密の恋人」にみたてて切りかえす筆者もすごい。