佐藤いぬこのブログ

戦争まわりのアレコレを見やすく紹介

軍歌とブギーバック

アラフィフと軍歌(1969年の場合)

今年(2024)は「今夜はブギーバック」から30年だそうですね。

今夜はブギーバックが発売されて30年」で思い出したのが、1969年の『暮しの手帖』で見かけた軍歌のレコード特集[ほんとの軍歌はきかれなくなった]です。

1969年99号『暮しの手帖

1969年といえば、敗戦から24年経過しています。つまり「今夜はブギーバック」の「30年」より、もっと近い距離に戦争があった時代。そして

  • 敗戦時に青年だった人はアラフィフに
  • 翌年にはEXPO'70(大阪万博)がひかえている

1969年は、そんな年なのです。

「要らざる色気」と、軍歌

[ほんとの軍歌はきかれなくなった]の筆者(阿川弘之・当時48歳)は、1969年に売られていた軍歌のレコードに怒っています。ざっと要約するとこんな感じ。

われわれは、軍歌=青春の世代である。

20数年前の青春をしのぼうと、最近出た軍歌のレコードをいくつか聴いてみた。しかしどれも派手なアレンジが加わっていて、気にくわない。

人気俳優がナレーションをしていたり、流行の若い歌手が歌っていたり、妙な効果音が入っていたり。いちいち「要らざる色気」を感じて、すごく萎える。

 

レコード会社は、われわれ「醜い中年男」の涙をしぼろうとしているのか。

 

いろいろ聴き比べてみたけれど、皮肉なことに「旧敵国」のエドムンド・ロス楽団によるラテン・リズムの『日本軍歌集』が、一番ききやすかった*1

▽これが阿川弘之にえらばれた『エドムンド・ロス日本軍歌集』。同じく1969年99号『暮しの手帖』から。

1969年99号『暮しの手帖

 中年に売るために「要らざる色気」で加工された軍歌よりも、ラテンの軍歌を選んでしまう気持ち、少しだけわかるような気がします。

 そして、この記事を読んであらてめて気づいたことがありました。

2024年のアラフィフならば、単に「今夜はブギーバックから、もう30年か…」となるところを、1969年のアラフィフ(阿川弘之)は

「死んだ友人たちと24、5歳の齢の開きができて、われわれはみんな醜い中年男になってしまった」

といった調子で、【中年の自覚と、死者の年齢】がセットになっているのです。敗戦から四半世紀たっても、戦友の「歳」がアタマから離れないのですね。

▽死んだ戦友は、いつまでも20代

(この場合は戦友の年齢ですが、人によってはそれが「空襲で死んだ妹の年齢」「満洲から引揚げる時に衰弱死した坊やの年齢」「硫黄島から帰ってこなかった夫の年齢」にあたるのでしょう)

サンバ調の『同期の桜』

 さて。先述の『エドムンド・ロス 日本軍歌集』が、高橋芳朗さんのラジオで紹介されているのを発見しました。エドムンド・ロスの「Whipped Cream」という曲は毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』のテーマ曲として長年使われているのだとか!以下、書き起こしを引用します。

高橋芳朗)かっこいいよね。続いてはですね、ここからがもうハイライトですけども。エドムンド・ロスさん、もう一枚日本の音楽にインスパイアされたアルバムを作っております。それがなんと日本の軍歌集です。こちら!

ジェーン・スー)ええっ? うわうわうわ!

高橋芳朗)軍歌のカバーアルバムをリリースされております。1968年のリリースですね。

ジェーン・スー)『Edmundo Ros Japanese Millitary Songs』って書いてありますよ!

高橋芳朗)これ、非常に持ち運びに困るジャケットでですね、旭日旗をバックに満面の笑みのエドムンド・ロスという構図になっております。

 

[中略]

 

高橋芳朗)で、まずじゃあこの軍歌集から紹介したいんですけども。一曲目はお馴染み『同期の桜』。「貴様と俺とは同期の桜」ですよ。これは歌が入っていないんですけど、まさしくサンバ調のアレンジ。しかも、さくらつながりでさっき聞いていただいた『さくらさくら』のフレーズを随所に織り込んだ、マッシュアップした技ありのカバーとなっておりますので、ちょっと聞いていただきましょう。エドムンド・ロスで『同期の桜』です。

 私は、音楽全般にすごく疎いので、この書き起こしはとても勉強になりました。ぜひ読んでみてください。

miyearnzzlabo.com

▽ちなみに今回、サムネイルに使ったのはこの画像です(昭和12年11月「主婦之友」より)。ちょうど日中戦争がはじまった頃、グリコの販促品が「軍歌集」だった時代。

▽同世代と軍歌でつながるケース:漫画『大家さんと僕』より

narasige.hatenablog.com

 

*1:「結局旧敵国のエドムンド・ロス楽団がラテン・リズムに乗せた「日本軍歌集」で、妙に力んだところやおセンチなところが無く、ただ明るく楽しげで、私も7割がたその意見に賛成という皮肉なことになってしまったが、これはただし私の求めていた軍歌の「よさ」とは少し違っていた。せっかく自分で自分に与えたプレゼントではあるが、そういう次第で旧帝国陸海軍の軍歌というもの、ある意味では、やはりもう亡霊、さがしてもいない青い鳥」1969年99号『暮しの手帖

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