国境の観光、鴨緑江節

▼これは昭和3年の「現代漫画大観・日本巡り」に出てくる朝鮮「新義州のページ。昭和3年の本なので「日本巡り」に朝鮮・台湾・樺太などが出てくるのです。日本の名所として鶴ヶ岡八幡宮(鎌倉)と、ピョンヤン(朝鮮)が同じ本に紹介されている本‥。

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解説の文を抜粋します。

新義州(朝鮮)

鴨緑江と云ふ流れ一つ隔てて、新義州と安東県が向い合っている。向こうが支那でこっちが朝鮮。(中略)国境と云ふものは、我々日本人にとって不思議なものである。(中略)新義州の河岸に立って、四方を眺めてみよ、不安の中に何とも云えない雄大さが、身に迫るを覚えるであろう。(「現代漫画大観・日本巡り」昭和3年より)

 

「向こうが支那でこっちが朝鮮」とあるように、「(北)朝鮮側から対岸を眺めてみませんか?」という観光案内になっている点に注目。今の観光と逆ですね。今は中国側の安東(現在の丹東)から北朝鮮を眺めているのに‥‥。

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 Wikipediaから「新義州」と「安東」(現在は丹東)をそれぞれ引用してみます。

新義州(신의주시、シニジュし)は朝鮮民主主義人民共和国平安北道の道都。鴨緑江を挟んで中華人民共和国丹東市と向かい合う国境の街である。人口は約29万人。鴨緑江には中朝友好橋が架かり、中朝交通の要衝となっている。

 

丹東市(たんとう-し)は、中華人民共和国遼寧省南部に位置する地級市鴨緑江を隔てて朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)と接する国境の街である。旧名は安東中朝貿易最大の物流拠点であり、その7割以上がここを通過すると言われている

 

【関連画像1】中国の安東(丹東)側から見た絵葉書を。やはり絵葉書の売りも「国境」。「安東」鴨緑江の流筏作業 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

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【関連画像2】これは国境警備の歌。「東に流るる豆満江、西に流るる鴨緑江おうりょくこう)」とあるので、鴨緑江を矢印で示してみました。

♪千古の鎮護白頭の/東に流るゝ豆満江/西を隔つる鴨緑江/蜿蜒はるかに三百里/国境守備の名誉負ふ/武夫茲に数千人 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

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 この国境を流れる鴨緑江おうりょくこう)ですが、かつて鴨緑江節」がすごくポピュラーだったみたいですね。今の感覚だとわかりにくい…!歌詞を引用します。歌詞の2番はお色気を取り入れるんですね。上方座敷歌の研究より

 

1. 朝鮮と満州支那)の境のあの鴨緑江 流す筏は アリャ よけれども ヨイショ
雪や氷に ヨ コリャ 閉ざされてョ 明日はまた 安東県(あんとうけん)に着きかねる チョーイ チョーイ チョーイヤナ チョイ チョイ

 

2. 新所帯燃えない かまどに焚き火をくべてェ ヨイショ ヨイショ
「オイ煙いじゃないか」
「だって燃えないんですもの」
叱らず教えて アラ頂戴な ヨイショ 三味線持つ手にョ アラ 火吹き竹 褄(つま)とる マタ 教えて エエ 頂戴な チョーイ チョイ チョイヤナ チョイ チョイ

 

【関連画像3】鴨緑江節」と「安来節」がセットで親しまれている様子を描いた昭和3年の漫画を見つけましたのでのせておきます。

 ↓こちら、浅草で影絵の大道芸。BGMに「安来節」と鴨緑江節」を使ってます。「てうせんと(朝鮮と)、支那のさかひの、アノ鴨緑江……♪」と歌いながら影絵を踊らせる。

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▼こちらも浅草で「安来節」&鴨緑江節」。「舞台ではやせば、見物もはやす。舞台と客席が1つになって、賑やかに愉快な雰囲気を作る。まさに代表的浅草名物。」とあります。浅草は、客席のノリがいいのですね。

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獅子文六の小説「男の友情」(獅子文六全集 11巻)にも、鴨緑江が登場します。6月に多摩川の若鮎を出す店に行った男たちが、鮎が妙に柔らかいのを不審に思い、どこで獲れた鮎なのか店の女性に問うのです。

「ちょいとニイさん、そんん野暮なことをきくもンじゃなくてよ。今頃、多摩川の鮎がこンなに大きくなっていると思って?」

「おやおや、じゃア、一体、どこの国の鮎なんだい」

すると、女中さんはニヤニヤ笑って、黙って三味線をとりあげた。そうして一段と声をはりあげ、

「朝鮮とオ…」

と、鴨緑江節を唄い出した。

「ハッハッハッ。わかッたよ、わかッたよ」

「ハッハッハッ。半島の鮎姫かい」

一同は大笑いをした。おかげで鮎のことは忘れて、聞きしに優る愉快な女中さんのサービスで、馬力を掛けて飲み始めた。

 

▼ここまで庶民に親しまれていたらしい鴨緑江ですが、日本統治時代の鴨緑江には巨大ダムが建設され、現在も北朝鮮の国章になっているとか。びっくり!こちらのブログに詳しいです。

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