「笑いで健康づくり推進条例」のニュースが流れてきましたね。このニュースで思い出したのが、昭和初期に発行された「笑い」をテーマにした雑誌付録です。
今、私の手もとにあるのは、昭和8年・新潮社の『笑いの日本』と、昭和11年・講談社の『トテモ愉快な絵読本』。どちらも人気マンガ家や著名人をぜいたくに起用しています。
「うっとうしい国難」を笑いとばそう
しかしこれらの雑誌付録は、表紙から連想されるような“古きよき時代のノンビリした笑い”という雰囲気じゃないんですよ。「笑い」の陰に焦りみたいなものがただよっている。
▽表紙は福々しいけれど…
今回は、昭和8年8月の『笑ひの日本』(新潮社)をメインに紹介しましょう。ちなみにこの年の3月、日本は国際連盟の脱退を通告しています。
▽「笑へ!大いに笑へ!」と、圧の強い前書き。
笑へ!大いに笑へ!今の日本に1番必要なものは、朗らかな笑ひだ。うっとうしい国難も、不景気も、健全な笑ひによってのみ、打開されるのだ、一掃されるのだ
▽【資源の山】=【満洲】があるから、笑えるよね?という理屈。「自力更生のヘコ帯しめて」という響きもなんだかイヤ。
▽昭和8年『笑ひの日本』には、ヒトラーの焚書ネタもある。くず屋と交渉するヒトラーです。なんとなく戦後の漫画のように見えるけれど、左下に1933年(昭和8)のサイン。
▽昭和11年『トテモ愉快な絵読本』より、戦死した息子に手をあわせる老父。繰り返しますが、冊子のタイトルは『トテモ愉快な絵読本』です。
敗戦と笑い
「笑い」のパワーで「うっとうしい国難」は突破できるはずだったけれど、結局できませんでしたね。
余談ですが、これは敗戦の翌年に出た「初笑い いろはかるた」(アサヒグラフ)です。またしても無理な「笑い」を提案している。原爆カルタで、一体どう笑えと?
▽同じく「初笑い いろはかるた」から「良薬は口に苦し B29」。大空襲が「良薬」とは…。
▽今回は昭和8年の冊子を主に紹介しましたが、昭和11年の「笑い」はこちらをご覧ください。「笑い」と「死」が混ざってます。焼け野原になるまであと9年。
▽「うっとうしい国難」の時代にデビューしたのが、昭和のユーモア作家・獅子文六です。