あけましておめでとうごさいます。タモリの発言「新しい戦前」がTwitterで話題ですね。2023年はいったいどんな年になるのでしょうか。
ちょうど手もとに昭和11年(1936)の雑誌があります。大日本雄弁会講談社「富士」新年号の豪華附録『トテモ愉快な絵読本』。昭和11年のお正月といえば、翌月には二・二六事件が起こる、そんなお正月…。
新年号だけに人気漫画家が大集合しているのですが、いったいどういう気持ちで読んだらいいのか戸惑ってしまう内容でした。今日はその中から何点か紹介しましょう。
「日本に生まれたりゃこそ朝酒寝酒」
▽キュートな絵で知られる前川千帆→□が描くお正月。「日本に生まれたりゃこそ朝酒寝酒 何の苦もないふところ手」。まさかこの10年後、焼け野原が待っているとはね!
▽上の「日本に生まれたりゃこそ 朝酒寝酒」の次のページには、“靖国神社で、息子に手をあわせる親”の絵。1枚の紙の裏と表に、【朝酒】と【死】が印刷されているわけです。
▽『タンクタンクロー』の阪本牙城が描く幸せな風景。が、都会の幼児が少年になるころは、疎開先で空腹を抱えることになるのだろうなあ。
▽お屠蘇気分の新年号に、いきなり差し込まれる戦場。「やまと魂」というタイトルです。
▽『トテモ愉快な絵読本』の巻頭カラーは、これでした。「咳一つ 聞えぬ中を 天皇旗」。
▽上の「咳一つ 聞えぬ中を 天皇旗」を描いた細木原青起は、数年後に「大東亜共栄会議」のイラストも描いていた模様(画像の左下に名前有)。人気漫画家や人気小説家であればあるほど、時局と無縁でいられなかったことでしょう。
細木原青起画… https://t.co/cUsIH99YQB
— 佐藤いぬこ (@inukosato) 2022年10月2日
▽扉に描かれていた詩「愉快に笑へ」(サトウ・ハチロー)。「どうで暮らすなら 笑うて暮らせ」。ぞッ。
以上、昭和11年のお正月雑誌でした。この新年号の翌月には二・二六事件が起こり、翌年(昭和12)からは日中戦争が始まります…。
▽翌昭和12年、原宿に立派な「海軍館」が完成。 海軍思想の普及を目的とした施設で、子ども心をくすぐる仕掛け(ジオラマなど)が詰まっていました。