flickrで、銀座にたたずむ女性の写真を見かけました。朝鮮戦争の最中、1952年(昭和27)の撮影です。背景の日本女性と同じくらいの背丈、パンナムのかばん、磨かれた靴。
拡大。とってもマジメそうな人です。軍の関係者に見えますが、どういう理由で銀座にいるのでしょうか?
彼女はリアルM*A*S*H
この 女性の写真をFlickrでなんとなく追っていたら、意外なことがわかりました。「奥様は魔女だったのです」……じゃなくて、「彼女はMASH のドクターだったのです」!MASHとは「Mobile Army Surgical Hospital」の略。(小説の『マッシュ』は、朝鮮戦争の野戦病院を舞台にしたブラックコメディ。ロバート・アルトマン監督により映画化されました)
▽flickrのキャプションによれば、彼女は「ノルウェーのMASH」(NORMASH)の人で、Wikipedia内にも写真が使われています。
【閲覧注意】彼女と戦場
flickrのキャプションを元に調べてみたところ、この方のお名前はInger Schulstadさん(1920-2010)。写真撮影時は32歳くらい。 お年を召しても笑顔が同じです。
以下、flickrで「ノルウェーのMASH=NORMASH」のカテゴリーにあった写真を引用します。(銀座は通過地点だったのね…)。矢印が「銀座にたたずんでいたメガネの女性」※リンク先閲覧注意→ flickrより
▽左端が彼女
▽参考:ヘリコプターと負傷者。映画『マッシュ』のオープニングで負傷者を運んでいる形のものでしょうか。NORMASHの写真ではありませんが、同時期(1952年)です。※リンク先閲覧注意→ flickrより
朝夕ともにに6時のヘリコプターは、いつも歓迎されない事態なのだ。なぜなら薄明の中をパイロットが危険をおかしてヘリコプターを操縦してくるということ自体、危篤状態の負傷者を運び込むのを意味しているからである。(『マッシュ』リチャード・フッカー/角川文庫)
▽参考:同時期のソウル。 PXになっている新世界百貨店(旧・三越 京城支店)
ここで冒頭にあげた銀座の写真をもう一度見てみましょう
左の看板を拡大すると、「日比谷公会堂」で行われる楽しげなジャズイベントが。昭和27年(1952)、日本は特需で復興中。銀座を歩く人たちはまさか彼女がこのような仕事をしているとは思わなかったでしょうね。
▽同時期、銀座から近い聖路加病院には、朝鮮戦争の負傷者が運び込まれていました。(小説『マッシュ』にも重傷者について「 このような症状の患者は通常、東京へ送られる」とあります。)
▽兵士に大人気だった“日本での休暇”。
▽獅子文六「やっさもっさ」と「M*A*S*H 」は、実は同じ時期を描いています。