佐藤いぬこのブログ

戦争まわりのアレコレを見やすく紹介

ちょっと高い椅子を買いました

映画「HER」*1の暖色オフィスを見て、なんだか素敵な椅子が欲しくなり購入にふみきりました。


有名な高額椅子の少しお安い版です。私の知人が十数年前から愛用しているというのも買う決めてに。


この椅子は、3,4年でモトがとれるはず、という損得勘定で買いました。
ほら、腰が疲れると他の色んな部分(メンタル含む)に影響が出て、それをメンテナンスするために、やたらにお金を使っちゃう可能性があるじゃないですか。


この椅子プラス中山式 快癒器 4球式 強弱機能付 背中 腰用の使用で、腰がずいぶん伸び伸びしている気がする‥‥
伸び伸び感は、椅子のせいか中山のせいか、わからないけど。
前は椅子(ふつうの事務椅子)から立ち上がると、腰が固まって、しばらく「く」の字っぽくなってたんですよね‥。


(ネット情報により、この椅子は梱包のままでは玄関に入らないことが予想されたので、配送業者さんに庭で梱包を解いてもらい、家の中に運びこみました。)


スタパ齋藤さんも、その椅子についてずいぶん前に書いているんですね。スタパさんは薬局の息子さんであるせいか、時々、健康について力強く書いてくれるから好きです!

ところで、どうしてケータイWatchなのに椅子なのか!? というコトだが、これは、なぜならば!! ケータイすなわちモバイルにおいて最も大切なのは体!! 体が資本!! 資本である体のカナメと言えば腰!! 腰を支えるのは椅子!! そうなんだよアニキ!! だから最も快適な椅子の情報を伝えていきたいんだよ俺は!!

*1:私は「誘う女」のホアキン・フェニックスが大好き。眼球が動かないところが好き。

運び方いろいろ

高輪の物流博物館の地下で*1、1958年(昭和33年)の記録映像「荷役は変わる」*2を見ました。想定外の洒落たイラストのオープニング、軽やかな音楽、美しいカラー映像で50分の長さがあっという間。


その中で、上品なナレーションが繰り返し「人間の肩で荷物を運ぶ時代は、もう終わりです」みたいなことを言うんです。パレットとフォークリフトで荷物を「固まり」としてさばくのが、当時すごく画期的なことだったらしくて。


「人間の肩で運ぶ時代は、もう終わりです」って、そんな連呼されてもねえ、大げさねえ、という感じで見ていたけれど、同じく記録映像の1つである昭和20年頃の光景を見て、ビックリ。目を覆いたくなるようなハードな環境の中、重い荷物を人力運びをしているんです。(女の人たちも‥‥)


博物館を出る頃には「人間の肩で荷物を運ぶ時代が終わって、本当に、本当に、良かったね!」と思わざるを得ないしかけになっているのでした‥。


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*1:パソコンの画面みたいな感じで自由に見る事ができる。

*2:制作は岩波映画・脚本が岩佐寿弥・企画が日本通運

フランス製のコットンタイツ

「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみる

「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみる


まぶしい話題がぎっしりの本です。特に印象的なのは「タイツをキュートに穿きたい」という章で、サマー・ドレスに黒いタイツをあわせる女優ズーイー・デシャネルや、フランス製のコットンタイツなどが紹介されています。その中で

海辺のリゾートならともかく、素足のまま夏の街で過ごすのは危険です。冷房でひどい思いをしたことが何度もあります。


と書かれていますが、これは、本当にそう思います!そして「素足のまま夏の街で過ごすのは危険です」という文が、いわゆる健康読本ではなくて、こういう本にスッと書かれているのがまた素敵なのです。



(夏の私たちって、知らない間に緯度が違うレベル*1の温度差を瞬間移動しているんです。冷えきった電車から灼熱のホームへ‥‥フライパンのような道路から冷えた屋内へ‥‥21世紀の夏、丸腰の外出は避けたいですね!)



「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみるは、「タイツをキュートに穿きたい」の次のページが「古本屋で獅子文六を探す楽しみ」なのも嬉しい!


獅子文六といえば、「但馬太郎治伝」は日本女性の洋装の歴史・健康・体質について考えるのにピッタリの本かもしれません。みなさまにもぜひ読んでいただきたいです→id:NARASIGE:20090506






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*1:聖☆おにいさん」3巻より。イエスが真冬のアパートで「だって、トイレって緯度が違うレベルの寒さじゃない!?」と言っていた。

「グランド・ブダペスト・ホテル」の日本版を妄想する

■「グランド・ブダペスト・ホテル」のオープニングは寂れたホテルが舞台なのですが、その寂れ方がすごく良かった。


華やかでクラシックな建物に1960年代の改造が加えられているんです。食堂の恥ずかしい大壁画(晴れた日のアルプスみたいなやつ‥)*1や、ペコペコの自販機や、やたらに貼られた掲示物(受付はアチラです、的な。従業員の少なさを掲示物でカバー?)など。


でも、そのペコペコ自販機が強制的に時をかけさせてくれるんです。ああ人生は走馬灯だね!あっけないね!と。


■そんな「グランド・ブダペスト・ホテル」を日本で作るならば、と妄想してみました。


舞台は(私のブログでは繰り返し登場する)有楽町の日劇がおすすめ。現・有楽町ルミネあたりです。



出来た当時は「陸の竜宮」だったそうですが、戦後、容赦ない改造で原型が全くわからなくなってしまった物件なのです。出来たのは1933年。ちょうど「グランド・ブダペスト・ホテル」の回想シーンと同時期ですし。


日本版のストーリーもそのまま「1968年、日劇にしばしば現れる謎の老人と、彼から話を偶然聞く事になった小説家」みたいな感じでどうでしょう‥


日劇は、戦時中は風船爆弾の工場*2→敗戦後は若い男性に人気の裸レヴュー→高度経済成長時の大量ネオン装飾など、時代ともに変化しました。


その変化っぷりは「グランド・ブダペスト・ホテル」のケーブルカーより急勾配かも!



まずは竣工当時の昭和8年頃(1933年)をご覧下さい。設計は、銀座和光原美術館、上野東京帝室博物館(現東京国立博物館)や日比谷第一生命館などを手がけた渡辺仁氏。和光と同じく立派なイメージです。



そして昭和55年頃。日劇の最終の姿。もはや出来た当時の面影はありません。(銀座百点624号から)

「来夢来人(小柳ルミ子)」という垂れ幕までつけられちゃって。垂れ幕の隙間に、凝った形の窓が見え隠れしています。「来夢来人」の他、「農林年金会館」「デン晴海(ホテル)」「後楽園矢野大サーカス」「象物語」「影武者」「いい色との出会い東芝カラーテレビ」「日劇ミュージックホール、素敵なショータイムをあなたに」「鶴田浩二特別公演」などの看板があります。

私はこの段階の日劇しか知らないのですが、私の印象ではただの「変なビル」でした。このあと取り壊され、有楽町のマリオンになり、マリオン亡き後は有楽町ルミネになります。

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*1:※後日、映画をもう1度観たら、1930年代の回想シーンにも食堂の大壁画ありました!ガーン!あの絵は前からあったんだ!ちょっと言い訳させてもらうと、1968年のシーンでは「食堂に放置されてる複数のワゴン」と「晴れた山の壁画」が組み合わさって、ちょうど1970年頃の日本のデパート大食堂の壁画っぽさ(欧米の風景写真を、背後から蛍光灯でコウコウと照らす‥‥)を醸し出していたのです。

*2:「作業場所としても講堂・体育館など天井の高い建物がある学校は都合がよかったようであるが、東京では宝塚・日劇・国際劇場・国技館など主に劇場が使われた。」そうです。こちらのサイトより

厚木キャンプと、サイパン育ちの少年と、美しすぎる母と

久生十蘭短篇選 (岩波文庫)

優等生がポン引きに

久生十蘭の「母子像」(1954・昭和29)は、朝鮮戦争時の厚木基地が舞台。純真な中学生が、なぜか米兵相手にポン引きを繰り返すのです。


少年はサイパン出身の孤児、少年の母(行き別れ)は、サイパンの「南洋興発会社」に勤務していました。


この母親は、とても残酷な美人として描かれています。どのくらい残酷かは、ぜひ青空文庫で読んでみてください。

東京女子大を出た才媛で、会社のデパートやクラブで働いている女子職員の監督でしたが、その後軍の嘱託になって、水月」という将校慰安所を一人で切りまわしていました。非常な美人で……すこし美しすぎるので、女性間の評判はよくなかったようですが、島ではクィーン的な存在でした」
慰安所の生活というと、これはもう猥雑なものなのでしょうが本人はそういう環境で生長期をすごしたのですね」

「いや、そうじゃないのです。いまもいいましたように、すこし美しすぎるので、なにかと気が散って、子供なんか見ていられないいそがしいひとなので、独領時代からいるカナカ人の宣教師に預けっぱなしにしてありました」

とにかく冷たい母親ですが、少年は母を愛しています。
戦中も、戦後も、愛し続けます。それが切ない。

アメリカ」を使わずに会話する人たち

敗戦後、孤児になった少年は、ほかの戦災孤児といっしょにハワイに移されます。(そう、少年は英語を使えるのです。)

以下は、厚木基地で「ポン引きまがい」の行為を繰り返す少年を、担任が叱るセリフ。米兵がらみで叱っているのに、アメリカ」「米兵」を一切使ってない点に注目してください。

お前は、毎土曜日の午後、朝鮮から輸送機でつくひとを、タクシーで東京へ連れていったアルバイトとしては金になるのだろうが、お前の英語が、そんな下劣な仕事に使われていると思うと、先生は情けなくなる

朝鮮から輸送機でつくひと」って!!!これまた、ボンヤリとした言い方です!!!
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取り調べ中の警官も「アメリカ」を使いません。
朝鮮帰りの連中を東京へ送りこむ……ポン引そっくりのことをしていますわ。」といった具合なんですよ。

母親の"職業"とは

厚木基地周辺の粗野なタクシー運転手でさえ、「アメリカ」を使いません。かわりに「おめえの送りこんだやつ」と言うのです。

十月の第一土曜の夜だった。フィンカムの近くの、運転手のたまりになっている飲み屋へ車をたのみに行くと、顔馴染の運転手がこんなことをいった。
「あそこのマダムは、おめえのおふくろなんだろう。おめえはたいした孝行者なんだな。だがな坊や、おめえが送りこんだやつとおめえのおふくろが、どんなことをしているか、知ってるのか」
 太郎がだまっていると、その運転手は、
「知らなかったら、教えてやろうか。こんな風にするんだぜ」
 といって、仲間の一人を抱いて、相手の足に足をからませて、汚ない真似をしてみせた。

余談ですが、ここで出てくる「フィンカム」という単語。「フィンカム」といえば立川基地というイメージですが、この小説の舞台は厚木キャンプなんですよね。以下は参考画像。立川基地のフィンカムゲートそばにあるホテルの広告。写真には女性だけがうつっています…。Flickrより
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以前、久生十蘭『魔都』を読んでみたのですが、あまり入り込めず、途中で読むのをやめてしまいました。しかし、敗戦後の「母子像」(1954・昭和29)は、ギューッと集中して読むことができました。私が興味を持っている時代(朝鮮戦争の頃)が舞台だからかもしれません。
もし私と同じように『魔都』でギブアップした人がいたら、ためしに「母子像」を読んでみてほしいです!


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ハラハラ素足

■「仁義なき戦い」(1973年)をはじめて見た。


菅原文太が、アタフタ・ブルブルしながら偉い人を殺すシーンがあったけど、殺す標的を待っている間は、大雨。そして足元は雪駄&素足なんですよね。


水たまりの中には、タバコの吸い殻が沢山あって、待ち時間の長さを物語ってる。


これが、もし「水たまりに雪駄&素足」じゃなく、雨をがっちり防ぐ靴なら、アタフタ・ブルブル感が出ないでしょうねー。冷たい足元は、不安感、焦燥感の表現にぴったり。(セレブの素足は選ばれし者の象徴になるが、庶民はそうはいかない


これからのシーズン、大雨の中でも素足にパンプスみたいな女子を時々見かけます。21世紀は雨でびっしょり濡れたあと、冷房のコンビニに入ったり電車にのったりするわけでして、こんな急激な温度変化は「仁義なき戦い」の時代にはなかった!今の女子は、すごく恵まれているようでいて、けっこうキビしい環境におかれているのです。


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